幸生窯

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手づくりの風景

  • 冬の季節。ひんやりと澄んだ山の空気に包まれる中、幸生窯のものづくりは始まります。空がうっすらと白み始めるころ、日の出よりも一足早くベッドから抜け出して向かうのは、坂の上のアトリエ。ラジオのスイッチをONにして薪ストーブに火をつけ、挽きたての珈琲豆に湯を落とせば、暗い部屋に少しずつ芳ばしい香りが広がっていきます。作業椅子に腰を下ろして組んだ足の三角に、猫のキンゾウがすっぽりと納まるのがお約束。ポンポンと背中を叩いたり、耳の後ろを掻いてみたり。無から何かを生み出す前の、心やすらかなひと時です。

  • 朝の儀式を終えたら、机の画用紙に向かいます。拾った鷺の羽で形を描く。水彩クレヨンを水でのばし、筆で色を重ねていく。動物たちの原画を描いたり、原型をつくったりする作業は必ず朝に行います。空気も自分も目覚めたばかりのまっさらな時間の方が、良いものが生まれる予感がするからです。大小様々な動物に囲まれた空間で、考えず、心のまま、手の動きを頼りに、さらさらと描く音を連れてその姿を探しに行きます。設計図ができたら次は原型づくり。原画をもとに粘土を使って立体に起こし、土台と共に組んだ木枠に石膏を流し入れて型をつくります。

  • できあがった石膏型に丸めた粘土をぎゅっと詰めると、現れるのは大まかな形の動物たち。粘土は動物の種類、できあがりのイメージによって異なるものを使います。粗い土がもこもこした巻き毛のように見えたり、細かく滑らかな手触りが、よくブラッシングされたツヤツヤの毛並みを感じさせたり…。表現したい質感に合わせて土を使い分けることで、実際は固く冷たい陶器から、柔らかさや体温のようなものを感じられるのも陶芸のおもしろいところ。種類によっては敷地内の採土場から土を掘りだしてブレンドすることもあります。捏ねるのも、型に詰めるのも、押した型から形を崩さないようにそっと取り出すのも、すべて手作業です。

  • 型から取り出した動物たちに、別の日の早朝、毛並みや模様、表情を描き足します。同じ種類の動物を同じように描いていても、人の手で引く一本一本の線は僅かに異なり、それぞれに異なる表情が宿ります。仕上げを終えた動物たちは、窯に入れて低温で素焼きに。一度窯から出して釉薬に浸し、乾燥させてから絵つけして再び窯に入れ、丸一日焼成を行います。窯から出された動物たちからは、「カン…キン……キン………カキン」と音程もリズムもさまざまな貫入音が鳴り、まるで自然が完成を祝う演奏をしているかのよう。どこのお店に並んで、どんな人が手に取ってくれるのか。訪ねたこともない場所で、自分たちの知らないところで、動物たちを通してたくさんのつながりを持てることは、ものづくりを通じて得られる、私たちの喜びのひとつです。

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